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「どちら様でしょう?」
高くもなく、低くもなく、さりとて聞きにくい声音ではない、耳障りの良い声音が兵士達の耳を打つ。ようやく、三人は、我に返って娘に来訪の旨を告げた。
「まぁ。そのようなお偉い方が私に、どのようなお話があるというのでしょう」
眉を寄せて悩む表情すら美しい。だが、見惚れている場合ではない。両親の許可を取り、娘をあの方の元へ連れて行かねばならない。
最初は渋った両親も、金を見せたら掌を返したように喜び娘を手放した。娘は少しだけ悲しみの表情を浮かべながらため息をついた。両親の意に背くなど、道から外れた行為は出来ない。
それに、どう足掻いても相手は有名な高官。逆らうだけ、無駄だった。両親に別れを告げて、娘は兵士達と共に行く事を選んだ。
――ここで、娘の数奇な運命が決定づけられた。
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