幸と不幸をその身に浴びて

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 唐の時代――皇帝・玄宗は皇太子の嫁候補に頭を悩ませていた。あまり家柄が良くても、妃となった娘の実家が力を付けるかもしれず、そうなれば不要な争いを呼び寄せることになりかねない。  かといって、仮にも皇帝の息子……皇太子の妃となる者が、見目も悪く、家柄も低いとなれば、民衆にも臣下達にも示しがつかない。  候補を見つける選定者には、くれぐれも妃に相応しい娘を探してくるよう、言い含めた。心得たと言わんばかりに候補を見つけて来た選定者。臣下達も納得がいくだけの身分で、見目も麗しいと評価を得た者。  玄宗としては、後宮に多くの美姫を召し抱えているだけに、多少の美女に心を奪われる事は無い。  だが、皇太子の嫁となる娘には、皇太子の父として、嫁の義父として、挨拶をせねばならなかった。義務と……多少の好奇心とを併せてその娘を見た。  そして――玄宗と娘の運命が動き出した。
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