幸と不幸をその身に浴びて

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 年を重ねても楊貴妃は玄宗の寵愛を失う事は無かった。  無論、常に愛される努力をしていたのも確かでは有るが、日々の積み重ねで楊貴妃自身が玄宗を愛する事になったから、でもあるだろう。それでいて、後宮という女達の戦いの場に居ながらも少女のように純粋無垢な部分が変わらず有る事も魅力の一つだったかもしれない。  また、遠くから見てもハッキリと解る成熟した女としての花盛りという部分も際立つからか。  大人の女で有りながら何も知らない無垢な少女みたいな楊貴妃は、皇帝陛下の心を離して止まないのだろう。また、その美貌だけでなく、聡明さを窺わせる知性の片鱗を見せる事で、尚更惹きつけて止まないのかもしれない。  とある日の楊貴妃が玄宗に誓ったのはーー 「天に有っては比翼の鳥。地にあっては連理の枝の如く」  いついつまでも、二人は別れる事が無い。  という事だ。  天には天帝という尊きお方が居るけれど。地に有りては“帝”と呼ばれるお人は唯一人。  その皇帝陛下といついつまでもお側に居りましょう。  このような事を言われた玄宗は、益々楊貴妃を可愛がったと伝えられる。  しかしながら。  二人の愛が死によって別たれる事になる日もまた、近づいてきていたーー。 (了)
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