プロローグ

2/2
前へ
/67ページ
次へ
 幸せとは、何だろうか。 その問いには答えられない。そんなの、人それぞれだ。 そんなこと分かりきっている。 それでも、問うてしまう。 こんなことを聞く人間は、少なくとも幸せではないのだろうと思う。そして、自分もその一人なのだろう。 仮に答えがあったとしても、不幸せな人間はその答えを聞いたところで幸せにはなれない。 そんなことも分かりきっている。 それでも、やはり問うてしまう。 ……自分は確かに不幸だった。しかし、それでも歩む足は止めなかった。 きっと、いつしか幸せと思える日が来る。そう、どこかで信じていたからだろう。 結果として、その日はやってきたのだ。 端から見たら当たり前なのかもしれない、幸せだなんて大げさなのかもしれない。しかし、自分にとってはこの上ない幸せだと……そう感じた。 せっかく掴んだ幸せだ。いつまでも続いて欲しい、笑っていたい。 そう思うのは、わがままだったのだろうか。 すぐに、その幸せは終わってしまった。 その日々は幸せであったが、終わってしまうのならばそれは、幸せではなく不幸なのだ。 あぁ、やはりどこまでいっても不幸な者は不幸なのか。時は既に遅かったが、確かに悟ったのであった。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加