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『やっと、目が覚めたか。人の子よ』
と、頭を混乱させていると、どこからともなく女性の声が聞こえる。
「誰かいるのか……?」
突然の声に辺りを見渡してみるが、当然、人の姿など全く見当たらない。
このおかしな空間のせいで頭が狂い、幻聴でも聴いてしまったのだろうか。そう思ってしまう程に、人の気配すら感じ取れなかった。
「誰か居るなら、出てきてほしいかな……。怖いし」
本当に居るのかさえも分からない存在に、声を掛けてみる。
すると、俺の声に応じるかのように、先程までは感じ取れなかった強い気配を背後に感じた。
反射的に振り返ってみると、そこにはれっきとした人の姿があった。
『これでいいかな?』
姿を露にした声の主は、輝くような美しい金色の長い髪をしており、青く透き通った宝石のような瞳……まだ幼さを残した小柄で人形のような少女であった。
二枚衿の白いブラウスには襟元に黒のリボンが可愛らしく蝶結びされており、落ち着いた黒のスカートを履いている。
スカートの丈は膝上だが、服に合わせた同色の黒い二―ハイソックスが、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
「……えっと、こんにちは?」
どう接したら良いのか少々戸惑ってしまい、とりあえず挨拶をしてみたが溜め息を吐かれてしまった。駄目だったのか。
『挨拶なんてしている状況ではないぞ、人の子よ』
この少女はとても偉そう……というより、何かを演じているかのような口調で話す。なんだろう、厨二病とかそういう年頃の子なのだろうか。
自分もそういう頃があったなぁと、黒い過去を思い起こし懐かしむ。割と恥ずかしい。
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