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『そこでだな、一つ提案がある』
「提案?」
何だろう、全くもって検討がつかない。
『もう一度、生きてはみないか?』
その小さな口から発せられたものは、思いもよらない言葉だった。
「もう一度……。いやでも、二度と戻れないんじゃ?」
『汝の世界には、な。裏を返せば、他の世界なら生き返らせることは可能であるということだ』
他の世界があるということに驚きではあるが、人としてまた生きることができるのなら、それは本望である。
「死んでいるなら、生き返ることは心から願うよ。でも何で……俺にそんな都合の良いことしてくれるんだ?」
まさか、死んだ人間一人一人に一々こんな面倒をかけている筈がなかろう。だから、俺にわざわざ救いの手を差し伸べるというのは理解に来るしむ。
『すまないが、それも今は教えられない』
「またか……」
記憶に関しても教えてくれなかった。真意が本当に分からない。
『時が来たら、話すつもりだ。それまで待っていて欲しい』
「そうか……分かったよ」
今は何を聞いても教えるつもりはないようで、これ以上詰め寄っても意味がなさそうだった。
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