人口爆発

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2040年10月20日 国会議事堂にて人口削減法案の会議中に7人の議員が突然意識を失い、次々に倒れるという現象が起きた。 救急搬送された7人の議員は全員が死亡し、死因は不明で後日司法解剖が行われる予定だ。 2040年2月28日(今井真治) 武蔵野大学科学研究部は世界初のコントロール型ナノマシンの開発に成功し、日本のメディアに留まらず世界からも注目されていた。 これはあらかじめプログラムされた行動をするものではなく、リアルタイムで行動をコントロールすることができる。 このナノマシンが認可され普及されれば、様々な病気の治療に適応が可能になる。 『とうとうやったね、真治!』 食堂でラーメンをすすっていると前の席に焼肉定食を持った幼馴染で同じ大学の研究部に在籍している秋山明里が勢いよく座った。 彼女はなんというか昔から初対面の人間が相手でも全く壁を作らないので異性はもちろん同性からも好かれているタイプ。 俺とはほぼ真逆と言っていい人間だ。 『ああ、でも医療用に認可されるまではまだ難関が残ってるけどな』 味噌汁をすすりながらうんうんと明里が頷いていた。 明里は幼少期に父親を亡くし母親と祖母の三人で暮らしているのだが、母親がステージ4の胃癌、つまり末期癌にかかっていて、余命があと半年と言われている。 そして人口削減法が認められてしまうと祖母が安楽死の対象となるので考えたくはないが最悪のシナリオになると家族が誰もいなくなってしまう。 はじめから家族が居なく施設で育った俺は小学校の時に明里と出会い、そのお母さんに色々と世話になっていたので、秋山家には家族愛にも似た特別な感情を抱いている。 だから半年のうち、いや、それよりも早くナノマシンの医療適応の認可が必要なのだ。 それに人口削減法も絶対に認めたれたくない。
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