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第二の「探偵や登場人物のサブカル的な意味でのキャラ化」については、西尾維新などが推進し、いまや一般的なものとなった。
これについては笠井潔『探偵小説と記号的人物(キャラ/キャラクター)』や東浩紀、斎藤環などが論じており、また本論では主題ではないのでさておこう。
だが第三の「探偵と殺人の量的拡大」については清涼院以降、とりくむ人間は数えるほどしかいない。
見落とされがちだが、ここにも清涼院の特異性があったといえそうだ。
清涼院はなぜ従来の謎―論理的解明を逸脱し、無数の探偵を「まんが・アニメ的」なキャラクターとして登場させ、一二〇〇の密室殺人だとか全人類殺害計画「犯罪オリンピック」だとかいった、島田荘司以来の「奇想」、新本格が採用してきた「おばけ屋敷性」をウルトラ化した事件を書いたのか。
清涼院自身の解説によれば、これは中学生時代に読んだ山口雅也『一三人の探偵士』の元となったゲームブックや、高校時代にハマった田中芳樹による日本スペースオペラの金字塔である『銀河英雄伝説』の影響があるという。
しかし清涼院の異様さを、作家個人の読書体験だけに帰することはできない。
そこには外部環境の変化が――日本社会が経験し、新本格ミステリ第一世代が直面した時代状況の変化がもたらしたものが大きいからだ。
■震災から生まれた作家――震災が生んだニューミステリ
清涼院登場にいたる時代背景を探るために、まずは笠井潔の探偵小説論を確認しよう。
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