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「変わってしまった世界」と二一世紀探偵神話――清涼院流水/舞城王太郎論
七年前のあの事件で、多くのものが消えた。
それでも、七年の間に多くのものが戻った。
七年もあれば、その間に、また多くのものが消える。
それでも、世界は、着実に失ったものを取り戻した。
――清涼院流水『カーニバル 五輪の書』より
メフィスト賞の歴史は、第1回受賞者の森博嗣『すべてがFになる』にはじまる。
森にさきんじたプレ・メフィスト賞とも言うべき位置に京極夏彦、愛媛川十三がいたことはよく知られている。
そして森につづいたのが清涼院流水『コズミック 世紀末探偵神話』。
第1回と第2回の受賞作の振れ幅が、こののちミステリ界のみならず純文学やライトノベルまでをも震撼させる作品や作家を輩出してきたこの賞の活断層ぶりを象徴している。
賞の歴史上、特筆すべきは第19回の暗病院終了だろう。
暗病院は愛媛川の別ペンネーム、つまり愛媛川=暗病院はひとりで二度受賞した。
――これが舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』のなかでかたられる、メフィスト賞の歴史である。
舞城はどうしてこんな偽史を書いたのだろうか?
いまさら清涼院や舞城でもなかろうと思うむきもあるかもしれない。
だが、逆だ。
いまこそ彼らの試みを再検証すべきときなのだ。
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