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「おめぇも大概化物かもしれないが、『アレ』程化物じゃあるめぇ」
「『アレ』もまー、人の形はしているけど、近くにいられたらおっそろしくてかなわない。ま、それはお前も一緒かもしれないけど」
「いい人で~、かっこよくて~、力持ちで~、非の打ち所がない感じなんだけど~、化物だからね~『アレ』」
「もう、ぶくぶくってなってすごくきもちわるかった」
「お前、見た目からして化物だよね」
以上が、話に聞く化物の、近くの村の評価。
昼に村を離れて、今は陽も沈み始めている。
前へ伸びる獣道の他には細い葉の草が視界を塞ぐ程にぼうぼうと生えている。
後、幾ら歩けば良いのか。何時になったら着くのか。
延々と歩き続けた影響か、ここ最近何も食べていないせいか。
足が重い。引きずりながらも根性で進む。
息がか細い。口が渇いてしょうがない。ゼイ、ヒュー。ゼイ、ヒューと交互に息が鳴る。
目的地へ向かう途中に拾った杖がわりの枝にすがりつきながら、進む、進む。
草だらけの景色の中に灰色にくすんだうっすらと茶色の異物が目に入った。
あれか。あれ、なのか。
僅かに気を緩めた瞬間、足に鈍い感触。
力を入れて踏みつけたら、ごろりと石が地面を滑る。
それに準じて自分の体もぐらりと傾く。
必死に枝にしがみつくも、地面を穿つ枝の先端も滑った。
目的地が見えたのに――という強い思いも虚しく、体は地面に倒れ伏し、意識もろとも安息へと誘われた。
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