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まあまあとにかくお座りよ。どちらかといえば寝ているべきだと私は思うんだけどな、と言い残し、彼は部屋を出て行った。
とりあえず、彼に言われた通りにベッドにぽすりと腰掛けてみた。
起き抜けに色々あったせいか、現状がうまく理解できず、整理も難しい状態で、とりあえずあちこちをきょろきょろ見回してみた。
天井が自分の背丈の三倍以上もあり、床も寝転がって三回位回れる広さ。そして布が張られており、色は象牙で毛織物。窓は左側に両腕を開いたくらいの大きさ。明かりはランプに火が炊いており、柔らかな光を室内に与えている。
家主の性格が部屋に伝染しているかのようだった。
部屋について物思いにふけっていると、入口から彼が表れた。
その手には木彫りのカップ。
「水は飲めるのかな?」
問われたので答える。
「飲めるには飲めますが、血があると飲みやすいです」
「うん。わかった」
彼は手を背に回したかと思うと、ナイフを手に取り、それを口に咥えて、ナイフを扱った方の手の指を躊躇なく切り裂いた。
指をカップにかざして血の雫を落とす。
間もなくして傷口が泡立ち、綺麗な皮膚が表れた。
「はい、どうぞ」
血を含んだ水が渡される。
「え、あ……ありがとうございます」
水を飲む。僅かに鉄臭いのが逆に美味しい。
水を飲みきり、再度一息。
「えっと、ありがとうございました。助けていただいたり、水も、もらったり……」
「いえいえ。困った人は助けないと。私のようなものはね。
ところで、散々色々見てくれたと思うから私の方はだいたいわかってくれたと思うんだけど、君は、何者なのかな?」
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