55人が本棚に入れています
本棚に追加
月が変わり、同じ路線だけど、時刻の変わった通勤時間帯の各駅の新幹線。
在来線との接続が良くなったのか、以前よりも混んでいる。
忙しくなったけど、今週もいつもの車両の窓際のその席に、柳瀬さんの姿はなかった。
帰宅してゴロリと横になると、どっと疲労感に支配される。
ボンヤリと頭の片隅に、あの爽やかな笑顔が浮かぶ。
心なしか心拍数が上がっている気がした。
ふと、思い出したように枕の下に手を入れると、何度も見つめてきた名刺を取り出す。
連絡先は知っている。
(向こうは俺の連絡先知らないんだよな…)
クレームじゃないのに、わざわざ一販売員を名指しで連絡してくることも普通はしないだろう。
(俺から連絡すればいいんだよ…な?)
何度もメールを作成しては削除を繰り返す。
その一歩がなかなか踏み出せない。
ため息と共に、再び名刺を枕の下に入れると、ウトウトと睡魔が訪れ始め、ようやく眠りにつくことができた。
最初のコメントを投稿しよう!