55人が本棚に入れています
本棚に追加
「お客様、大変申し訳ありませんが、只今お釣りを切らしておりまして、少々お待ち頂いてもよろしいでしょうか。」
渡された千円札を一旦お返ししようとした瞬間、右手で制される。
「来週でも構いませんよ?橋本さんもこれ乗ってますよね?」
なんで、名前知ってんだよ…って思ったところで顔写真入りの名札をぶら下げているから個人情報保護もへったくれもない。
俺はまた心の中でそっと舌打ちをする。
「大変申し訳ありませんが、そのお約束は出来兼ねます。お釣りを用意して参りますので、少々お待ち頂いてよろしいでしょうか?」
営業用の笑顔を貼り付けて、事務的に対応する。
簡易テーブルの上に千円札をそっとお返しする。
「そうですか、お手数掛けますね。」
その表情は全く悪びれていない。むしろ爽やかな笑顔を崩さないでいた。
俺はその日一緒に組んでいた女性販売員の元へと急いだ。
最初のコメントを投稿しよう!