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「ちょっ、大山くんっ? どうしたの」
彼の身体はもう、彼しか見えないくらいに接近してて。
「先輩とバレンタインイヴを過ごすんです」
ニコッて首を傾げてそう言ったけど、わ、わわっ、わぁ。
「先輩にプレゼントがあるんです」
「ぷ、ぷれ?」
近過ぎる場所から息と一緒に言葉が落ちて、小さな紙袋を渡された。
「……っ、コレ」
「迷ったんですけどね、僕の好みの方にしました」
それは今朝、彼が「こっちの方がいいな」と吐いた妖しい発言、あだるてぃな例の物で。
「お、大山くん、女の子が……好き、なの?」
可笑しな質問には。
「ん、菜々子先輩が、好き」
摩訶不思議な回答が返って来る。
「えと、あのっ」
パニック、パニック、色んな事に答え合わせが必要で……って、――っん!?
ちゅっ、て小鳥が小さく鳴きました。……唇の上で。
「おっ、やまく」
ぐいーって押してみたけど、あれ、あれれ。
「菜々子先輩、力無いね、ゆっくり食べれそ」
「食べ……へ?」
「“甘い私”愉しみだな」
「……」
もの凄い近距離に隠れてたハンターに。
「クスッ、いただきます」
ゆっくり優しく。
むしゃむしゃと食べられちゃいました。
「――甘いね、菜々子」
―fin―
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