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そんなこんなであっ、という間に時刻は定時。
バレンタインは明日だけど、何と今日は金曜日。
こんな絶好なイベントイヴをカップル達が見逃す筈もなく。
「いいなぁ」
次々と消えて行く女子社員の背中を恨めし……羨ましそうに目で追った。
……帰ろっかな、寂しいし。
「先輩」
隣で毎日、今日も聞いたその声に。
「どうしたの、大山くん」
見れば分厚く膨らんだ紙袋。
「凄いチョコだね」
見目麗しい、あんどカワユイ大山くんは社のお姉様方に絶大な人気。
そういえば去年の今頃も凄かったなぁと。
まぁ、私の理想には届かないけど。
「先輩、食事行きましょう」
「へ」
いつもの屈託の無い笑みが意外な言葉を口にした。
「食事って、チョコは?」
重たそうな袋に視線を落とせば、それに気づいた苦笑いが返って来た。
「あぁコレ、毎年困るんですよね」ってそうじゃなくて。
「チョコくれた相手、誰かと一緒に過ごさないの?」
全く羨ましい質問だと思いながら投げかけた。
選びしろが無い狩りに失敗したハンターな私と、選び放題な狩人にも捕まらない純情くん。
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