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その日、俺、苑部(ソノベ)は30歳になった事を機に、大企業であるスポーツメーカー社を辞めようか、悩んでいた。同期会に出席をしたものの、皆が出世への希望を語り合い、新人の頃の失敗を笑い合っている。
そんな中で、悩み……今の会社を辞めるということ……を話せるわけが無かった。適当に相槌を打っていた。
今日は金曜日か。
不意に個室に掲げられたカレンダーを見上げて、確認した。明後日の午後は大学時代の同窓会で、出費が激しい事も気が滅入る。
だが、どちらも断るわけにはいかなかった。同窓会は5年毎に開催される為、なるべく出席を、と最初の同窓会で幹事から通告をされていた。
その代わり、河村……最初の同窓会の幹事……が、毎回幹事を引き受けてくれる、という条件だった。河村はいつも、そういう面倒な事を引き受けてくれる奴だった。
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