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「声はいいけど、わたしは興味ないや、あのタイプ。眠くなる」
授業後に講堂を出てあかりはバイト、わたしは図書館へ向かって歩き出した。
「眠くなるのは二日酔いのせいでしょ?」
講義と関係ないじゃないとたしなめた。
だけどあかりが水樹先生のことをいいと言わないのはわかっていた。彼女は一年生のときに一緒に受けてた体育の青木先生がいいと言ってたから。
”必修で体育なんて最悪?”とぼやきながら体育館に向かってたわりに、担当教員である青木先生がやってきたら態度が変わったのを覚えている。
青木先生はタンクトップに下はジャージ、スニーカー履いていかにもスポーツマンって感じで。俺についてこいよ系。
体育を受けてた他の女子たちも”ちょっといいね”ってヒソヒソ話してたけど、私はだめなのよね、筋肉ムキムキなの。小麦肌で白い歯とか、興味なし。スポーツの楽しさと危険性を熱弁したり、合間に冗談を言って笑いをとってたけど、何か冷めちゃうの。
わたしはそれより水樹先生みたいな方が好み。色白で細身で。筋肉はあってもいいけど、脱いで初めて、”この人ちゃんと鍛えてたんだ”ってくらいが理想。性格は寡黙っていうのかしら。無駄に笑顔とか見せない人がいい。
あかりと青木先生には悪いけど、本当の緊急時に適切な判断がとれるのは水樹先生の方だと思う。
「やっぱり男は筋肉よ、きんにく」
ほらね。階段を下りながらあかりは自分の好みを再確認していた。
「ユリはとる? 熱心に授業聞いていたみたいだけど。それにあんたのタイプではあるでしょ」
彼女もまたわたしの好みを知っているらしい。
「わたしの新規二単位はこれに決定。授業は面白かったし、目の保養にもなるしね」
ふたりで企むように目配せして、その日は別れた。
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