天空の家

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 わたしは深呼吸を試みながら、彼を見た。先ほどからずっと全裸なのに、はじめて彼の肉体を見た気がした。たくましい胸と腕、長い首、整った顔……額から汗が滴り、息を切らしている。  彼もまたわたしの身体を見ていた。  視線が重なった。 「ま、こと……」  彼が微笑んだ。  ふと彼を気持ち良くさせたいと想いに駆られ、わたしは自分で腰を前後に動かし始めた。わたしが動き出したと同時に、彼はびくりと身体を震わせた。それがなんだか嬉しくて、彼の腹部に手をついてこすり上げるように身体をくねらせた。  ”ユリ……気持ちがいいっ”  そう呟かれるたびに熱が上がった。彼を感じさせたかったのに、むしろ自分の方が興奮している。  幾分か経って、わたしがもう絶頂に近いと正しく感じ取った彼は、ウエストに置いていた右手をゆっくり足の付け根までおろして、わたしの敏感な突起を親指で転がした。  はじめてダイレクトにその箇所に触れられ、わたしはあっけなくえび反りになって逝ってしまった。  下からうっという呻き声が聞えた。身体がしびれて、垂直を保っていられないーー  そのまま後ろに倒れ込みそうになったわたしを助けるために、彼は起き上がってくれた。わたしの腕を掴んで引き寄せると、そのまま自分の腕の中に入れた。  わたしは彼の膝に乗る姿勢になり、性感の余韻を彼に包まれながら感じた。  今回彼はわたしの後を追うように達することをしなかったから、まだ苦しいほど中にいる。彼を体内で感じながら心拍数が落ち着くのを待った。  すぐそばで、ごくりと彼の喉仏から音がした。  ”本当はもうしばらく待っているべきなんだろうけど……”  彼はそう言うと腰を動かし始めた。快楽の波が引き切っていないのにさらに与えられて、わたしはされるがままになった。  自分の声じゃないみたいなよがり声をあげ、彼にしがみつく。  最後になって彼がわたしを乳房に顔を埋めたときーー彼の舌先がわたしの頂きに触れたとき、わたしはまた上り詰めるのを止められなかった。  彼は一度目と同じように、わたしの後を追って果てていった。
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