天空の家

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 暗くて暖かいーー  この二つの形容詞が両立する感覚を、わたしはいままで知らなかった。  意識はこの部屋の天井からベッドを見下ろしているみたいだ。ベッドの真ん中に寝そべる男女。男性は左を向き、女性は右を向いて抱き合っている。  目を開けると、彼はわたしの真正面にいた。わたしをじっと見つめている。左腕をわたしの下に敷き、空いている右手でわたしの髪に触れている。  ずっとお互い目を見ていた。  彼の優しい目と笑顔と声で、わたしは冷静さを取り戻した。震えない声で好きだと言えたし、愛していると言えた。  話しては、  キスをしたり、  触れてみたり、  抱きしめたり。  これらを何回繰り返したかも、どのくらいそうしていたかわからない。  いまが夜なのか明け方なのかわからない。  年の瀬なのか年の初めなのかもわからない。  だけどそれらすべてはどうでもいいことに思えた。
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