天空の家

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 少しばかり濃厚なキスが始まり、彼はわたしをうつ伏せにした。  彼はわたしの上に重なり、わたしの背中に舌を這わせた。首まで這わせてから、今度は甘噛みするように背中を下る。  時間をかけて愛撫し切ると、わたしの身体を反転させた。仰向けにすると同時に、わたしの脚を広げ、彼はその間に滑り込んだ。  彼がわたしの太腿に顔を寄せるーー  右手をふくらはぎまで滑らせ、そのまま足の甲までをなぞった。その手でわたしの足をそっと押すから、わたしの膝は自然と曲がった。  わたしはただ寝そべっているのがなんか嫌で、腕の力を使ってなんとか起き上がった。そしてぼーとしながら彼の頭部を見つめた。  女性に対して鈍感で、街で軟派なんて到底したことがなさそうな彼が、ここまですべてが上手なことが不思議に思えた。  相手の物理的な反応を記憶する能力が高いからなのか、指先が器用だからなのか、それとも愛情によるものなのか……最初のふたつの可能性が高そうだけど、最後の理由だったらいいなと思った。  そんなことを考えていた直後、わたしは小さな叫び声をあげた。彼の舌が足の付け根から敏感な箇所に移ったから。  彼がわたしの脚の間に顔を埋めてるっていうのに、次に起こることを考えていなかった。  わたし脳は急に活性化し、与えられた刺激に身をよじった。  そしてしばらくすると、彼は顔を上げた。  ”ユリ……もう一回”  この男はーー  もう口も聞けけないほどクタクタだったけど、わたしはこみ上げてくる愛しさから応じてしまった。  その代わりに彼が今度自分のことを”草食系男子”だと呼ぶものなら、叱責してやろうと心に決めた。  だけど彼がわたしのなかに入って来ると、わずかな怒りも消え去ってしまう。切なそうにわたしの名前を何度も呼ぶから。  わたしは腕を伸ばしそっと彼の唇をなぞった。キスを求めているわたしに気がつくと、彼は肘を曲げて唇を重ねてくれた。  彼を愛している……  このまま時が止まってしまえばいいのにと、本気でそう想った。
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