序章

行動パターン

「はい、どうぞ」

　冷蔵庫にいらっしゃったであろうひんやりしたガラスの器に、ぷるぷるのコーヒーゼリーとバニラアイスが乗っている。

「おいしい」

　わたしは作業を一時中断して、午後の休憩を楽しんだ。そして頭のなかで今期の行動パターンを確認して、かなり落ち着いているラインナップに満足していた。

　登校日はプログラミングの授業がある火曜日とゼミの金曜日。他の日は自分でスケジュールを組んで勉強。きちんと寝て、きちんと食べて、毎日丁寧に生活する。一人暮らしだからって食事を怠りたくないから、ほとんど毎日自炊。

　三年生の終わりまでは忙しくしていたけど、いまはこのくらいがいいでしょ。院の勉強で結構時間を取られるとはいえ、週休五日なんて大学生ならではよね。ちょっとだけ物足りない気はするけれど、後期からは卒論が忙しくなるから下手になにか初めて大役を背負うよりいい。

　バイトはなし。お小遣いで事足りているし、物欲が激しい方じゃないから。

　恋人もなし。前の人とは春休み中に別れた。わたしは最後まで自分をさらけ出せなかったし、出したいとも思わなかった。募集予定もないかな。いまは一人をのんびり楽しみたい。

　フロート用の長いスプーンを下唇に当てながら、そんなことを考えた。