173人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
「それで卒業旅行の話しに戻るけど、ユリもどう?」
どうやら今日呼ばれた趣旨は旅行に誘うことだったもよう。
「わたしはいいわよ、あかり楽しんできて」
「男性陣にあんたを誘うように言われてんだけど」
「それは女子の人数が少ないからでしょ? わたしは集団で旅行とか面倒だもの。適当に理由つけて断ってよ」
「はいはい」
期待薄ではあったみたいだけど。わたしがこういうの行きたがらないの知ってるくせに誘うんだから。
「じゃあ優等生さんはお勉強が忙しいということで…それよりさっきからなにしてるの?」
あかりがわたしのMacを覗いた。このあいだ喫茶店のマスターがしたみたいに。
「プログラミングの講義プリントに書いてあった、コード入力をためしてるの」
「水樹先生のか。ってあんたほんとマメだねーこれ補足として乗ってるだけじゃん」
机においてたプリントを手にとって彼女はそう言う。
「せっかく書いてあるんだから試してみたいじゃない。でも最後のとこエラーが出ちゃうの」
全部入力し終わったから、Enterを押すとチャートが現れる…はずなのに。
「ねぇなにが間違ってるんだと思う?」
「私に分かるわけないでしょ、もうバイト行くから」
「薄情者ー」
わたしがそう抗議したとき、後ろから聞き覚えのある声がした。
「コンマ後のセミコロンがひとつ抜けている」
・・・
最初のコメントを投稿しよう!