出会い

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「先生の講義を受けたのは、今年が初めてです。文化人類学部の学生なので」  なにか手助けになればと自分が畑違いな学生であることを告げると、先生は納得の声を上げた。過去に履修してた生徒の顔と名前をすべて覚えているのかしら。 「謎が解けた。でもなんでまた僕の講義をとろうと思ったんだ?」  先生はブラックのまま一口飲んで、そう聞いてきた。 「卒業要件に当たる必須単位はすべて取り終えていたので、選択の自由があったんです。だからどうせなら今まで習ったことがないジャンルから選ぼうと思って」  うちの大学は必須授業を取り終えていれば、あとは他学部の授業でも卒業単位を埋めることが出来る。  わたしはミルクの入った自分のを手前に寄せて、スプーンで簡単に混ぜた。Macはもう閉じてある。 「それに先生の授業はうちの学部まで知られているくらい有名ですし?」  賞賛の意味を込めて言った。彼の外見をダイレクトに誉めるのではなく、婉曲的に。だけど切り返しは妙なもので。 「でもきみは真面目な学生だろう」 「…」  ふたりの頭にクエスチョンマークが浮んだ。会話が噛み合っていない。わたしが返答に戸惑っていると先生が続けた。
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