出会い

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 軽く辺りを見渡す。そんなに広くない食堂では、サークルの決めごとをしている学生の輪やファッション誌を広げている女の子たちが談笑している。 「でも確かに、わたしも先生にお会いしたのは初回の授業がはじめてでした。学部が違うとはいえ同じ学校に三年もいるなら…今日みたいにここでお見かけしてもおかしくなかったのに」  例え声をかけられなくても、もし水樹先生がどこかに座っていたら、彼の存在くらいは気が付いただろう。  水樹先生を知らない去年や一昨年だとしても、”あそこにいる彫刻みたいな人は何者だろう”くらいのことは考えたはずだ。 「わたしランチタイムは来ませんけど、今くらいの時間はよくここでコーヒー飲んでるんです」 「だとしたら今までここで会わなかったのは、不思議ではない。僕がいつも利用するのは昼食で、コーヒーは研究室で飲む。ただ今日はコーヒーメーカーのビーカーにひびが入ってしまって、まだ取り替えていないからこちらへ来た」 「…コーヒーメーカーのビーカー?」 「あぁ、市販で売っているのではなく、自分で作ったものなんだ」  疑問系で返したわたしに水樹先生はそう答えて、また一口を飲んだ。  コーヒーメーカーを自分で作った…それもビーカーで。加えてまるで”今朝は目玉焼きを自分で作ったんだ”みたいに普通のことかのように言った。  もうだめだ…今度は堪えられずに笑ってしまった。この人はいったいどこまで面白いんだろう。 「…変なことを言ったか?」  さらには自分の発言の珍しさにも気がついていない。わたしの顔をのぞきこむように聞き返してくる。 「だって、普通つくります? そんなもの」  どんな形しているんだろう、わたしがそう呟いたのが聞えたみたいで。 「見に来るか?」  先生の提案に喜んで乗った。興味アンテナは三本とも立っている。
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