観察日誌

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「今日の授業はわかりにくかったか?」  先生が歩きながら聞いて来た。きっといつもより質問者が多かったのだろう。 「わかりにくくはなかったです。ちょっと難易度は上がってきたかなという気はしましたが」  わたしも確認したいところがあった。たーだ、その前に明らかに男女比がおかしいことに疑問を抱かないのかしら… 「随分と…女子学生の質問者が多いんですね」  ものの数分で研究室に到着。お邪魔すると同時に、これでさすがの水樹先生も気がつくだろうと、わたしは踏み込んで聞いてみた。 「あぁ、毎年そうなんだ。そして毎年テストの点数も女性の方が高い。中間でも期末でも、性別で平均点を取ったら五点以上開きがあるくらいなんだ」 「そうなんですか…」  踏み込み失敗(こんな踏み込み失敗する?!令状がある家宅捜索のようなものなのに)。質問が多い、すなわち問題を解消している、すなわち理解も深まってテストの点数もいい、ってわけね。 「結構深刻な問題だよ、入試試験や就職の成績もいまは女性の方が高いんだ」  先生は早速コーヒーの準備をしながら話してくれる。  彼は女子学生のモチベーションは何であるかは考えないのかしら。わたしは懸命にアプローチしている女の子たちを気の毒に思った。
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