タイピング・64×75

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「例えばここに、64×75とあるね。64という数字を聞いて何を思い浮かべる?」 「え?8×8とか…そういうこと?」 「まさしく。では75は?」 「うーん、25の3倍とか…3/4とか?」 「それでいい」  次に先生は白紙の紙とボールペンをとった。ペンで紙に大きめの四角をかいて、縦にも横にも7本ずつ線を加えて8×8のマスを完成させた。何をするのかしら。 「これが64だね。単純にこれの100倍ならいくつになる?」  少し教師のような口調で(職を考えたら当然だけど)彼はわたしに問いた。そして”6400”と丸をふたつ足しただけのわたしの回答に満足気にうなずいた。 「そう、だけどこの場合は100倍もいらない。必要なのは75倍だから、100倍の3/4でいいわけだ。そうすると…」  そういって先生が今度は赤いペンをとって図に赤い線を引いた。真ん中に一本、真横に一本ひいて、四角を四等分にした。たんぼの”田”の字みたい。 「このなかの一箱は、4×4だから16というのはいいね?」 「うん、まだついていけてる」 「ならあとは簡単だ。この三箱の合計は、100倍が3/4なのだから」  先生が”田”んぼの、左下のはこ、左上のはこ、右上のはこを赤く塗った。 「16+16+16…すなわち48の100倍が、64×75の答えだよ」  わたしは自分の頭でもう一度考えた。  16たす16たす16は48でそれに丸をふたつで4800…これが64×75と同じになることを。 「本当だ…」  たしかに複雑な計算はしていない。足し算と九九に分解しただけだ。そして納得できる。
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