いつもの定食

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 はじめて水樹先生と食堂で話したときは、彼が自分の容貌の良さに微塵も気が付いていないことに驚いたけれど、こうやって観察して行くうちにそれが当然だと思えてきた。  というよりもし先生が自分の外見の良さに気がついていたら、その方が不自然だ。  彼は自分の顔なんてまったく見ない。きっと朝顔を洗うときに、前に鏡があるから目にするくらいだろう。  そして自分がどんな顔をしているか…人より優れていないか、劣っていないかという、成人までには誰もが気になり時に思い悩むことをーーただの一度も考えたことがないだろう。  ”考えても意味がないこと”や”考えても面白くないこと”、については一切無関心だ。  いつも仕立てのいいスーツを着ているから、なにかこだわりがあるのかと思いきや、スーツはそのブランドのものしかないという。最初に買ったところでずっと買い続けているらしい。  きっと食事もいつもの定番メニューを頼むのだろう。コーヒーメーカーと同じように”これしか選択肢がないかのように”。  風変わりにもほどがあるわ。観察日誌のキーワードは”非冒険家”に”変わり者”にしよう。 ・・・
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