いつもの定食

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「何を笑っているんだ?」  そんな考え事をしているうちに水樹先生は昼食を買い終えて、定食を乗せたトレーを置いてわたしの前に席の椅子を引いた。 「なんでもない」 「そうか」  わたし用に買って来てくれたドリンクを有り難く受け取った。水樹先生と食事をするのは…一方的に食事姿を見るのは始めてだ。  お箸の使い方良し。お茶碗・お吸い物の持ち方良し。姿勢は常に良し。口に物を入れているときはしゃべらないし、マナーは完璧ね。 「いつもよりおいしい気がする」  先生がそう呟いたから、わたしは前の定食を確認した。 「でもそれってほとんど毎日頼んでいるやつ、じゃないの?」  焼き魚に煮物、おひたしにお吸い物に白米。日替わりだけど、そう変わらないだろう。それにわたしの”リサーチ”では、水樹先生は学食でも冒険しないはずだ。先生が日替わり定食以外を頼んでいるなら、日誌を書き換えなきゃいけない。 「あぁ、いつもと同じものを頼んでいる」 「じゃあ、」 「きみが前に座っているからだと思う」  ”突然食堂の調理師の腕が上がったとは思えないし、いつもと違う要因は他にないから”とぶつぶつ呟く。 「…」  口説いているわけじゃないのよね、水樹先生の場合。わたしはあんまり真に受けないようにしながら、日誌の追加事項を考えた。  ”激しい天然”
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