夕食は

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 そして妙な脱線ーー相手の心中確認は終わり、話しは自然と昔話に戻った。 「そういえば一人暮らしなのに実家から通っているんだったな。ご両親は?」 「共働きで、別々に外国で働いている。ぜんぜん帰ってこないわ」  アルバイトしなくても充分やっていける資金を提供してくれていて、感謝しているけど。 「大学の近くで一人暮らしをしようとは思わなかったのか?」彼が聞いてくる。 「考えたことはあるけれど、下手に近くて満員電車にもまれるより、小一時間座ってなにか作業できる方がいいと思って。それに気に入ってるの、いまの家。昔からお家が好きなのよね」 「じゃあインナーな文学少女だったわけか」 「文学少女……そんな知的な響きが似合うかわからないけど、インナーは当たりね。唯一やってたスポーツも屋内の水泳だったわ」 「いまでも泳ぐか?」 「全然。あ、この話しを掘り下げてもわたしの過去に”デスクトップ分解事件”みたいな代物はないからね」  一緒に笑った。それに先ほどから受け答え専門だった水樹先生が、わたしがしたのと同じような質問をすることで、彼なりに会話を進めようとしているのがわかってほっこりした。 「じゃあいまの趣味は? 最近の関心ごとでも」 「うーん、洋画鑑賞かしら。ベタだけど」
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