学園祭

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 あの夜は楽しかった。先生とふたりで食事をしていたときから、まきちゃんとマスターと飲み明かすまでずっと。  マスターが高校時代、モテるらしいという噂を聞きつけて野球部に入りバレンタインの日にわくわくしながら紙袋を三つ持参した話しや、まきちゃんが間違って女の子とホテルに入っちゃったときの話しに延々と笑っていた。昔話に加えて、いままで店にやって来た変なお客さんシリーズのネタは尽きない。さすが喫茶店を営んでいるだけあって、彼らは聞き上手だし、同時に話し上手でもあった。  わたしの同級生は、同じような歳の子と合コンやカラオケに行ったりしているのが楽しいのだろうけど、わたしは人生経験が豊富な彼らといる方によぽど魅力を感じた。 「楽しかった、本当に」始発になってしまった帰り際に、水樹先生はそう言った。  ただあの日以来、先生とあまり時間が取れずにいる。先生は何かの開発にかかりっきりだからだ。完成したら教えてくれるっていうから、わたしはそれを心待ちにしている。 ・・・
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