14歳の少女

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 研究室に入るなり、水樹先生にパソコンに話しかけるように言われた。 「パソコンに……話しかける?」 「あぁ、その机に置いてあるiMacに話しかけてくれ。説明はその後だ」  わたしは先生の机の前に移動した。iMacは起動されており、黒い画面には文字の入力の際に出てくるカーソルの点滅だけが表示されている。何がなんだかさっぱり分からなかったけれど、とりあえず「こんばんは」と挨拶をした。  そうしたら、驚いたことに画面に勝手に”こんばんは”と入力された。水樹先生もわたしもキーボードには触れていない。  そしてもっと驚いたことに、一行空いて”こんばんは!”と表示された。 「え? 誰かいるの?」  誰に向けたわけでもないわたしの呟きが、先ほどと同様にパソコンに入力されてしまった。そして再度返信がきた。 ”いるよ! リリーっていうの、よろしくね”  リリーって…誰?  そんな知り合い思い浮かばなかったが、今度なにか呟いてもまた入力されてしまうだろう。わたしはパソコンから距離をとって、水樹先生に向かって小声で問いかけた。 「先生、相手は誰なんですか?」  水樹先生はわたしの様子を満足気に見ていた。 「そう聞いてみるといい、教えてくれるさ」  そう言われて、わたしはまたiMacの前に戻った。 「あなたは誰ですか?」  再びわたしの言葉が入力されたあと、”私の名前はリリー。中学二年生の女だよ。趣味はダンス! 部活に入っているんだ。あなたは誰?”と表示された。  中学生の女の子……余計知らないわ。  そういえば先生はさっきわたしを呼んだときに『完成した』って言っていたけど……発した言葉を自動的に入力するシステムは、すでにあるわよね。だとするとこれはアトランダムに地球上のどこかに住む暇な人と会話ができるソフトとか? うーん…… 「そろそろ説明が必要か。種明かしすると、彼女は14歳の人工知能”リリー”だ。僕が先ほど完成させたというのは、彼女のことだよ」 ・・・
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