14歳の少女

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 そういえば、最近よくニュースで見かける。日本は他国と相対的に見るとまだ少ない方だけど、それでも今年の被害者は去年の十倍に増えたとか。 「その対策として、いまここにいるリリーの人物像を少しずつ変えていくつものサイトに泳がせるんだ。ネット上でリリーと普通に会話している分にはなにも起こらないが、相手が現実に会うことを強要してきたら、警察に通知が行く。警察は文面を調べて相手が暴行目的の可能性が高いと判断すると、人工知能に変わってチャットを打ち、相手が提示して来た場所と日時に会うことを約束する」 「……14歳の女の子と会えると思って来た男性が待ち合わせ場所に行くと、待っているのは警察ってわけ?」 「そういうことだ」  幼い少女が被害に合う前に、捕まえられるというわけか。 「画期的だわ……」  わたしは感銘を受けた。わたしは再びパソコンの画面を除いた。 「いまは警察官が少女に成り切っておとり捜査を行っているんだ。だけどそれだと人手が限られるし、チャットをしている捜査員はその間に通常業務ができなくなるだろう。そもそも相手が犯罪者とは限らないから無駄打もあるしね」 「それに対して”リリー”なら、何人もの相手と勝手にチャットをしてくれて、本当に犯罪者がいたときだけ教えてくれる……ねぇ、これ素晴らしいシステムだわ」  これなら警察は労力に対して効率的に犯罪者を見つけることができる。  あ、でも…… 「その場合って……検挙はできるの? 現実問題だけど、実際被害者が存在しない事件を有罪にすることって可能なのかしら」  ”暴行を働こうとした”っていうのは、どこまで有効なのだろう。 「”殺人未遂”と同じように”暴行未遂”とか?」 「犯人が初犯なら、刑がどうなるかはまだわからない。ただ常習犯なら、過去に犯した罪で裁くことができる。この手の犯罪者は一度成功すると繰り返す傾向が強いから、調べると未解決の犯人に該当する可能性が高いんだ」 「ということは、もともと犯罪者をつくり出すためのものではなく、探し出すためのものなのね」 「そういうことだ」
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