電話越しのキーマカレー

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 お祭り騒ぎも一段落ついて、本格的に寒くなってきた頃。水樹先生は学際の夜に完成した人工知能の説明のために、九州の大学まで出張に向かった。 「次はここに、飛行機の便名を記入してください」 「了解した」  出張の前々日に研究室に行くと、段ボール三箱積み上げられていた。    着いたその日に直接大学に向かうからホテルに荷物を送れないと言って、 彼はこの量の機材と共に出掛ると言った。わたしはなんでピックアップサービスを利用しないのかと聞くと、逆になんだそれはと聞き返されてしまった。  この研究室から宅急便で空港に送れば、飛行機に乗せて福岡空港で預かり手荷物と一緒に出てくるというのに。彼がこのサービスの存在を知らないのだとわかって、わたしは急いで宅急便に集荷の電話を入れた。先生に伝票に記入してもらい、あとは空港でカートに乗せてタクシーの運転手さんに任せるように伝えた。  水樹先生はこれで身軽に出掛けられると喜んでいた(すごく便利だったと九州から感銘の電話を入れてきたくらいだ)。    わたしはというと、年末まで仕上げなきゃいけない卒論の執筆で大忙し。  先生の研究室で書かせてもらったりしているけれど、それでもやはり文献がすぐ手に取れる利便性から図書館でやることが多くて、夏学期ほど一緒にはいられなかった。  だけど学際の夜に連絡先を交換してから、たびたび電話で話すということはしていた。電話越しに同じものを作るという変わったこともしたり。 ・・・
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