ダイヤモンドと塩ときみ

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 ”ショーン・コネリー”みたいな店主にお礼を述べて、タクシーに乗り込んだ。先生に駅は赤坂と六本木一丁目のどちらがいいかと聞かれ、千代田線が通っている赤坂をお願いした。 「駅で彼女を下ろした後、交差点の方に出て欲しいのですが」  彼が運転手さんに行き先を伝え、車が夜道を走り出す。 「先生はどんなところに住んでるの?」 「どんなところか……なんの変哲もないな。距離的にはここから近い」 「マンション?」 「ああ、そうだ」 「キッチンはハイテク?」 「ハイテクかは……ハイテクなキッチンの基準を知らないから、わからないな」  先生はいかにも彼らしい答え方をした。 「それともいまから寄って行くか?」  わたしの関心が伝わったみたいで、そう提案してくれた。 「いいの?」 「もちろん、歓迎する」  先生は運転手さんに、駅は止めてまっすぐ交差点に向かってくださいと頼んだ。そしてものの数分でたどり着いたのは、思わず見上げてしまうような高層ビルだった。
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