天空の家

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「きれい……」  ビルの明かりが星の光に見える。都内が一望できる絶景。イルミネーションで輝くのお台場の観覧車や、そこに繋がる橋まで映し出されている。  朝は東京湾も見えて気持ちがいいだろうな……  わたしの期待値は、予想の十倍よりも大きかったピカピカのエントランスをくぐったときから高まっていた。大理石の上を踏み進み、来客が休憩できるように備えてあるソファーやテーブル、テレビを横目にエレベーターに乗った。  32階まで上がった南側が彼の住宅だった。  ”水樹先生、あなた何者なの?”という問いは、玄関を開けてもらって”どうぞ”と言われた瞬間に忘れてしまった。気持ちが良すぎるほど開放的なリビングの壁二側面がすべてガラス張りで、そこから見える夜景に釘付けになったからだ。  予想通りといえば予想通りだ。モダンでシンプルで、無駄のない空間。先生のイメージにぴったりだ。一人暮らしにはあまりにも広すぎるし豪華すぎるけれど。もっと部屋のなかを見て周りたかったけれど、まずはこの景色を堪能しようとガラス窓にへばりついた。  水樹先生はキッチンに立ってコーヒーを入れてくれている。そしてわたしの感嘆を片眉を下げながら聞いている。  先生は毎日みている景色かもしれないけれど、わたしは騒がずにはいられない。だって空の上に住んでいるみたいなんだもの。
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