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「このあとカラオケ行くやついるんだけど、柳もどうだ? 同僚の美人さんも一緒で大歓迎だけど」
話の流れから推測すると、どうやら集団は韮崎の大学時代の仲間で、今日は久しぶりの集まりだったのだそう。参加出来なかったのは韮崎だけのようで。
そういえばそんなことを言っていたような。数日前を思い出していたわたしに韮崎は視線を寄越し、残念だけどとカラオケを断った。
「さすがに繊細な美人をいきなり参加させるのはなあ、ないだろ。今日は疲れたうえに無理矢理俺が誘ったんだし。だからやめとく。皆の顔見れただけでも良かったよ」
「なんだよ。独り占めか?」
「そんなんじゃねえよ。大事な同僚だからな。おまえらにたぶらかされたら不憫だ」
「柳……相変わらず女に優しいのな。お盆はずっとこっちいるのか?」
「ああ。てか女の子にだけじゃないだろ、俺が優しいのは。おまえにもだ」
「照れること言うなよ~。じゃあ、明日また連絡するわ」
「おう。じゃあな」
一番仲の良かったらしき男の人とひとしきり話したあと、韮崎は皆に手を振る。そうして、名残惜しげに集団を見送った。
「わたしなら気にせず、行ってきたら?」
「いや。いいんだ」
「韮崎は嘘つきね」
「えっ」
「呑みに行きたかったんじゃなくて、あの人たちに会いたかった?」
「……悪い」
違和感の正体はこれだったのかと、いつもの韮崎らしくはないと思いはしたけれど、その表情に納得する。
「いいよ。でも、わたしを誘った意味は不明だけどね。あんな仲いいなら、気後れする必要も感じないけど」
「っ、あ、ああ。……」
軽く責める私になど上の空で、韮崎は、小さくなっていく集団をまだずっと、振り返り見つめていた。

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