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「みゆさん、ご指名です。7番お願いします。」
機械的な声が私を呼ぶと同時にまた私の心も切り替えられる
次の人への"みゆ"を作って披露するために、切り替えなければいけないのだ
7番テーブルに向かいながらそこに座る男の記憶を脳の奥からひっぱり出す
名前、性格、話題、みゆのキャラ
全て思い出せた瞬間、心のどこかでホッとした
頭の中で膨大な記憶が巡ってる間も綺麗な作り笑顔は忘れない
「みゆちゃぁん、遅いよ!早く座って」
少しだけ白髪の生えた男は自分の隣を大袈裟に叩く
「はーい、ごめんね、お待たせ。」
少しだけスペースを作ってグラスにアイスを入れる
カラカラと氷を回してグラスを冷やしたあとボトルのアルコールを注いだ
濃い目だったよね?
そんな質問などどうでもいい、と言うかのように男は質問を投げかけてくる
「みゆちゃん連絡ちょうだいって言ったじゃん、何でくれないの?」
そういえば連絡先を登録してなかったことに気付く
そんなこと悟られないようにお酒を作る手は止めない
「えー?どうしてみゆからしなくちゃいけないの?そういうのって男からするものでしょ?」
「だ、だけどさぁ、」
「みゆはそう思ってたから待ってたんだけどな。でも斉藤さん連絡くれないし。嫌われてるのかと思っちゃってた」
なんて嘘八百。
「そっ、そんなことないよ!!嫌いなんて!好きだよ!みゆちゃんは?僕のこと好き?」
「きらーい」
「えっ…、き、嫌いなの?」
作り終わったグラスをハンカチで拭いてはい、とコースターの上に置く
そして少し首を傾げて言った
「うーそ、大好き。」
うふふ、なんて語尾にハートが付きそうなくらいの可愛い声で言う
好き、だなんてどちらも嘘つきなのにね
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