第一章

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いつからこんな生活をしているのだろう。 新品のような、真っ白なシーツ。部屋に運ばれてくる朝食。 カーテンなんて触れたことなんてあったっけ。 私のことはメイドがほとんどやってくれる。 着替えから、髪の毛のお手入れまで。 まるで私はお人形。 今日もそんなお手入れをされて、一日が始まった。 「シルク様、今日はいい天気ですね」 髪の毛を梳きながらカトレアが言った。 窓を見ると、そこには青々とした夏の空があった。 たしか昨日は雨だった気がする。 1日でこんなに天気が良くなることなんてあるのか疑問に思う。 「でも、暑いのは苦手」 「そうですか? 私は好きですよ」 「だって、太陽の光が強すぎるもの」 「でも、いいことだってありますよ」 「例えばどんなこと?」 「お洗濯物もすぐ乾くし、傘で手が塞がれることもありません。何より暖かないい香りを感じられるじゃありませんか」 「そうかしら。今日みたいな雲一つない空は何だか寂しそうに見えるわ」 そういうと、窓のほうを見つめた。 窓の外では2匹の小鳥が鳴きながら飛んでいる。 「いいえ、見てください。鳥たちがあんなにも楽しそうじゃないですか。」 私は、そうねと素っ気ない返事を返した。 目線を戻すと、少し顔を歪めたカトレアと、まるで古びた絵画のような表情をした私が鏡に映っていた。
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