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「ふざけないで!!貴女達は異常だわ!!こんな事をして赦されると……」
「赦されますよ。ここではどんな法律も通用しない」
私の言葉を遮って少年はそう言うと、とても甘美な笑みを浮かべた。
「今暴れるのは得策ではないでしょう。そんな恰好で逃げ出す御積りですか?」
その少年の言葉に……今にも飛び出しそうだった罵声をゴクリと呑み込んだ。
「貴女のお部屋に服を用意しています。それを着てから話を聞いても遅くはないのでは?」
少女のその言葉に少し考えた末……小さく頷く。
「賢明な方だ。その方が《ここ》では……楽になれる」
そう言って少年は少女と目を合わせると、クスクスと自嘲気味に笑った。
「さぁ……参りましょうか。夢現(ゆめうつつ)の幻想郷……夢幻楼(ムゲンロウ)へ」
二人の声が重なり、それに促される様に歩き出す。
……夢幻楼。
彼等の言ったその言葉を反芻したままそっと扉を抜けると、バタンと大きな音を立てて扉が閉められる。
その音はまるで、今まで平穏だった日常に別れを告げられた様に聞こえると同時に……これから起こる過酷な運命を嘲笑うかの様に、いつまでも繰り返し私の耳に響き続けた。
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