121人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「いやぁああ!!」
言い表せない恐怖が体を支配し、甲高い悲鳴を上げながら動くはずもない手足をバタつかせる。
……助けて!助けて!助けて!!
心の中で必死に助けを求め続ける。
警察でも他人でも神様でも誰でもよかった。
……誰でもいい!誰かここから救い出して!!
しかしいくら待っても助けが現れる事は無かった。
拘束された手足がすり切れヒリヒリと痛む。
一向に理解できない状況に体を震わせながらポロポロと涙を零し、襲い来る不安と恐怖を堪える。
「……誰か……」
そう小さく擦れた声で呟いたその時、ガシャンと大きな音を立てて……扉が開く音が聞こえた。
ビクッと身を竦め怯えたまま視線を移すと……そこには一人の男が立っていた。
少し色素の薄い髪のその男は私をジッと見つめると、少し自嘲気味に笑って静かにこちらに歩いてくる。
……声は出せなかった。
何故なら彼は私を助けに来た救世主ではないからだ。
……彼の歪んだ瞳にそれを確信する。
彼こそ私をこの恐るべき場所へと招待した張本人。
最初のコメントを投稿しよう!