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「……ここには誰も来やしない。ここには俺とお前の……二人だけ」
そう言って男は嬉しそうにも……何故か悲しそうにも見える笑みを浮かべ、震える私の頬に触れた。
男に触れられた瞬間、体中にゾワリと冷たい汗が噴き上がる。
「……ど、どうして……こんな……」
今にも消えてしまいそうな擦れた声で問いかけると、男は小さく笑って私の唇に触れる。
「これは復讐だ。俺の全てを賭けた復讐なんだよ」
そう言って男は私の震える唇に口付けた。
「……っ……いやっ!!」
男の唇を噛みそれを振り払うと、嫌悪と拒絶の籠った瞳で男を睨み付ける。
「……っ……悪い子だ」
男は噛み切られた唇から流れる血を舌で拭うと、面白そうに笑ってそっと顔を離した。
「これから俺が躾けてやるよ。……お前が俺を求めずにいられない様に」
そう言ってクスクスと笑う男の歪んだ瞳から目を離せないまま、私の頬を凍りつく様に冷たい涙が零れ落ちた。
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