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その微かな痛みが、オレの嘘を暴いている。
欲しがってないなんて嘘だって。
オレを抱いていた腕が離れて、立ち上がった先輩がオレを見下ろす。
「ぐるぐるしてないで……早く俺にしろよ」
かしゃっと鍵の外れる音。
先輩が家庭科室を出て行く。
よろっと立ち上がると、理科室に向かう。
息を吸って、先輩に振り回される『お気に入り』のオレの仮面をかぶった。
慌てた素振りで中に飛び込み、クラスメイトのブーイングに明るい笑みを浮かべる。
もう少し。
そう思うのは罪なのだろうか。
もう気持ちはとっくにあの月のものだとしても、オレもあの人もそれを知っていたとしても、もう少しだけ魅力的な月に追われていたいと思う。
きっとそれは罪だろう。
罪だと解っていても、やめるつもりはないけれど。
<月は星の影をめぐる:番外編 終>
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