月の影

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それは、先輩の本当の気持ちを隠すために浮かんでいるだけだ。 月が本当の姿を地球の影に隠すように、強すぎる自分の思いを隠す為に浮かんでいる。 そして、そんな顔をさせているのはオレだ。 手を伸ばせば手に入ると解っているのに、手を伸ばすことが出来ないオレのせいだ。 待っていてくれると知っているのに。 どうしても躊躇ってしまう。 「……いずみ……」 「好きだよ?星影」 オレも。 言いたい言葉を呑み込む。 替わりに両手を伸ばして、先輩の顔を引き寄せた。 がちっと歯が当たって、びくっとする。 ぱっと手を離して、口を手で覆った。 何度もしたことがあるのに、自分からだとなんでこうなるのか。 顔がかあって赤くなる。 それを隠す為に膝に顔を埋めた。 背中に回る腕がオレを身体ごと抱きしめた。 膝の上に何かが乗る感覚と、ふうって髪の毛に当たる息。 「ほしかげ?」 おずおずとあげた顔に満面の笑み。 ぺろって舌が唇に触れて、開いた口の中に舌が入り込む。 「……んっ」 吐息が漏れると、器用な舌が誘うように動いて、いつの間にかオレの舌は先輩の口の中にあった。 舌に柔らかく歯を立てられて、身体が震えた。
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