242人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
それは、先輩の本当の気持ちを隠すために浮かんでいるだけだ。
月が本当の姿を地球の影に隠すように、強すぎる自分の思いを隠す為に浮かんでいる。
そして、そんな顔をさせているのはオレだ。
手を伸ばせば手に入ると解っているのに、手を伸ばすことが出来ないオレのせいだ。
待っていてくれると知っているのに。
どうしても躊躇ってしまう。
「……いずみ……」
「好きだよ?星影」
オレも。
言いたい言葉を呑み込む。
替わりに両手を伸ばして、先輩の顔を引き寄せた。
がちっと歯が当たって、びくっとする。
ぱっと手を離して、口を手で覆った。
何度もしたことがあるのに、自分からだとなんでこうなるのか。
顔がかあって赤くなる。
それを隠す為に膝に顔を埋めた。
背中に回る腕がオレを身体ごと抱きしめた。
膝の上に何かが乗る感覚と、ふうって髪の毛に当たる息。
「ほしかげ?」
おずおずとあげた顔に満面の笑み。
ぺろって舌が唇に触れて、開いた口の中に舌が入り込む。
「……んっ」
吐息が漏れると、器用な舌が誘うように動いて、いつの間にかオレの舌は先輩の口の中にあった。
舌に柔らかく歯を立てられて、身体が震えた。
最初のコメントを投稿しよう!