波旬の娘

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「誰の供物だって?」 男は皮肉げに笑った。 供物を捧げる神や仏がどこにいるというのだろう。 「御前、まだか?」 「まだ喰えねぇのか」 「早く喰わせてくれよぅ。なぁ、紅葉様」 割り込んで、異形どもが催促の言葉を口にした。 彼らの元は何だったのだろうか。 男が最初に見たような、頭部は獣で、体は人の姿をしている者が多い。 酒の所為か欲の所為か、浮世の姿を保てずに、障気や酔気を吐き出す者もいた。 「待ちや」 御前と呼ばれた女の声が異形どもを叱りつける。 「じゃあ、その男をくれよ」 お預けをくらって、異形どもは鞍替えをするらしい。
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