6人が本棚に入れています
本棚に追加
『何が?』
『アツシさんが集中しようとしているのに邪魔してしまいました。次からは気を付けます』
彼女は姿勢を直してそう言った。飲み物を持ってきてくれただけなのに、ここまで気を遣わなくてもいいんだけど…
それに葛西さんから言われたタイミングだったから、彼女のせいって訳じゃないのに。
『かまわないですよ』
そう言って彼女に視線を向けると、彼女はテーブルにメモを置いた。
『これ私の携帯の番号です。スタジオを使われる連絡は直接私にお願いします』
『鍵を預かれれば、水森さんの手を煩わせないよ』
笑いながらそう言ってみたが、彼女は真面目な顔で答える。
『いえ、これが私の仕事ですから…』
なにやらぴしゃりと言われてしまい、僕は苦笑いを浮かべる。
彼女は失礼しますと僕に背を向けたけど、数歩歩いて振り返った。
『水森って言いにくくないですか?雪でかまいませんから…』
そう言って彼女はその頬を緩めた。ちょっとだけ恥ずかしそうなその微笑みと、さっきの言い方との違いに僕はドキッとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!