第1章

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『何が?』 『アツシさんが集中しようとしているのに邪魔してしまいました。次からは気を付けます』 彼女は姿勢を直してそう言った。飲み物を持ってきてくれただけなのに、ここまで気を遣わなくてもいいんだけど… それに葛西さんから言われたタイミングだったから、彼女のせいって訳じゃないのに。 『かまわないですよ』 そう言って彼女に視線を向けると、彼女はテーブルにメモを置いた。 『これ私の携帯の番号です。スタジオを使われる連絡は直接私にお願いします』 『鍵を預かれれば、水森さんの手を煩わせないよ』 笑いながらそう言ってみたが、彼女は真面目な顔で答える。 『いえ、これが私の仕事ですから…』 なにやらぴしゃりと言われてしまい、僕は苦笑いを浮かべる。 彼女は失礼しますと僕に背を向けたけど、数歩歩いて振り返った。 『水森って言いにくくないですか?雪でかまいませんから…』 そう言って彼女はその頬を緩めた。ちょっとだけ恥ずかしそうなその微笑みと、さっきの言い方との違いに僕はドキッとしていた。
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