第1章

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僕は寒さに身を震わせた。さて、戻るか… スタジオに戻ってソファーに座るとテーブルの上にコーヒーの入ったカップが置かれていた。湯気がたっているから、ついさっき淹れたばかりだろう… 僕はカップを手に取り一口飲んだ。温かさが外気に冷えた体を暖めてくれる。僕はその温かさにほっとしていた。 そしてふと思う。僕は何も入れずにこのコーヒーを飲んだ。そう言えばさっき彼女が持ってきたコーヒーもミルクや砂糖は用意されていなかったのに、僕はそのまま飲んでいた。 それにこのコーヒー、まるで僕が戻ってくる時間が分かっていたかのようなタイミングで淹れられていた気がする。 コーヒーのことが気になったからだろうか、さっきの疑問を思い出した。 僕はアルバムの製作の時、このスタジオがまるで初めて使うスタジオのように感じた。その理由はなんだったんだろう? ソファーに体を埋めてスタジオを見渡す。やはり何も違うところは見いだせない。 一体彼女は何をしたんだろう?
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