第2章

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スタジオにこもって二週間が過ぎた頃だった。今日も僕は曲作りに夢中になっていた。気がつけば10時近くになっていたが、ふと浮かんだメロディーに譜面を取り出しペンを滑らせる。 一時間程して我に返った僕は顔を上げた。ここ最近その日のうちに帰ったことがなかったな。 僕はかまわないが雪さんは女性なんだから、あまり付き合わせるのもよくないな。 そう思った僕は帰り支度を始めた。今日は家に帰ってこの曲を仕上げよう。 コートを着てマフラーを身につけた僕が部屋を出ると雪さんが立ち上がる。 『今日はお早いですね』 にっこりと笑う彼女に僕は苦笑いを浮かべた。 『たまには雪さんも早く帰って…って、11時回ってちゃ早くもないけど』 『今日は寒いですから、暖かくしてくださいね』 彼女はそう言うと僕を見送りに来てくれた。 『明日は何時から使われますか?』 『昼くらいかな。朝にメールしてもかまわないかな?』 『もちろんです。では、また明日』 僕は彼女に手を振って歩き出した。さっき作っていた曲が頭の中を埋め尽くしている。旋律を思い浮かべながら歩いていると、ふと気づいた。 僕、譜面を鞄に入れたか?
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