第2章

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慌てて鞄を確認するとやはり譜面が入っていない。 しまった。 あれがないと…あれから10分程しかたっていない。雪さん、まだいるかな。 そう思った僕はスタジオへとUターンした。地下への階段は電気が消えていた。ゆっくりと階段を降りてドアを開ける。 鍵はしまっていなかった。ホッとした僕はスタジオに入ると雪さんの姿を探した。 ぼそぼそと話し声が聞こえる。あれ?雪さんの他に誰かいるのか? いつもの部屋の扉をゆっくりと開けるとソファーに雪さんが座っていた。背中を向けている彼女は僕には気づいていない。 『だから…』 少しだけ彼女が声を荒げる。 どうやら電話しているみたいだ。でも雪さんの声の感じは今まで聞いたことのないものだった。 『言いにくいなら私から言ってもいいわよ。別れましょう』 え? 彼女が発した言葉に僕の思考が止まった。 『私は仕事を優先する。それはきっとこれからも変わらない。だから、もう…』 彼女が言葉を止めて、携帯に目を向けた。相手が電話を切ったのか…
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