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彼女はそっと微笑んで立ち上がる。僕の心臓の鼓動はまだ速いままだ。
『アツシさん、もう遅いですから…』
そう言いながら彼女は振り返る。帰れと言いたいんだろうけど、今の君を一人にできない…いや、違うな。僕が彼女と一緒にいたいんだ。
『なら、一緒に…』
『明日の準備もしておきたいので…』
彼女はそう言って有無を言わせない笑顔を見せる。また仕事の顔になっている雪さんに寂しさを感じてしまう自分がいた。
『なら…明日は休みにしよう』
『え?』
『食事付き合ってくれない?』
唐突な僕の言葉に彼女は戸惑いを隠せずにいる。だけど僕は気にせず彼女の腕を掴んだ。
『今日はもうおしまい。さあ、帰ろう』
『…はい』
少し強引かなと思ったけど、雪さんは僕の言葉に頷いた。
もしかして…強引なのに弱いかな?
そんなことを思って、僕の口端が上がる。
雪さんは帰り支度を済ませて僕の前に立った。
『お待たせしました』
『行こうか』
そう言って彼女の手を取った。
『あ、あの…』
雪さんに小さな声で呼び掛けられて、僕は振り返る。
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