第2章

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『手を…』 放せってことか? 『放したら雪さん逃げちゃうから…』 冗談っぽく言って彼女の手を強く握ると雪さんは黙ってしまった。 図星だったのかな?また寂しさが僕を襲う。 二人で手を繋いで歩いていると街並みを飾るイルミネーションがキラキラと輝いていた。 『綺麗だね…』 『え?』 『街が輝いてる』 そう言って驚いた。僕はどんなに街がクリスマス色に染まっても、綺麗だなんて感じたことはなかった。なのに、僕は今このイルミネーションが綺麗だと思った。 今まではモノクロのクリスマスだったはずなのに… 僕は雪さんに目を向けた。雪さんはイルミネーションに目をやって、そっと微笑むと 『クリスマスですから…』 そう言った彼女の笑顔は本当に可愛くて… また心臓の鼓動が速くなっていく。 『やっぱりアツシさんは表現が素敵ですね』 『…』 キザだよな…こんなこと女性に恥ずかしげもなく言う男だと思われただろうか… こんな言葉を掛けたのは、雪さんが初めてなのに。
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